住宅ローンを組んだ多くの人が一度は考えるのが「繰り上げ返済」。
利息を減らせる、返済期間が短くなるなど、聞こえはとても魅力的ですよね。
特に、金利が上昇している今、今後の負担増を考えると少しでも早く返済したいと考えるのも当然です。
でも、実はすべての人にとって“得”になるとは限らないのが繰り上げ返済です。
今回は、「繰り上げ返済しないほうがいい場合」を5つに絞って、分かりやすく紹介します。


我が家では、住宅ローン完済も可能。でも繰上返済はしていません
1. “いざという時”のための資金(生活防衛費)がない場合


「貯金はないけど、とりあえずボーナスから繰り上げ返済して借金を減らそう!」
とても有意義なボーナスの使い方に見えますが、ちょっと待った!
急な出費があったときに、対応できる預金はありますか?
住宅購入から間もない方は、頭金の支払いで預金が少ないかもしれませんよね。
次のような急な出費があったときにアタフタする家計では、負担は増すばかり。
- 家族の病気
- 親の病気・介護
- 急な転勤・引っ越し
- 失業
いざというときのためには、目安として生活費6か月分はすぐに引き出せる預金として確保しておくのが目安といわれています。
繰り上げ返済は、のちの負担を減らすために行うもの。
もし、急な出費が必要な時、手元に現金がなかったら・・
結局、住宅ローン以外のところでお金を借りることになっちゃいますよね。
金利は、住宅ローンが1%未満なのに比べて、カードローンは15%程度。
住宅ローン | カードローン | |
---|---|---|
金利 | 1% | 15% |
10万円あたりの金利(年間) | 1,000円 | 15,000円 |
繰り上げ返済での節約も大事だけど、「何かあっても慌てない備え」があることのほうが大切ですよね。



生活防衛資金の額は、人それぞれ。
我が家は生活費2年分を目安にしています。
2. 教育費・車購入など 今後まとまったお金が必要な場合


子どもの進学、マイカー購入、リフォーム…。
将来に向けての出費は山ほどありますよね。
住宅ローンを無理に減らすより、将来の準備を優先すべきケースもあります。
- 進学希望の中高生がいる
- 数年内にマイカーを買い替える必要がある
- 家電の買い替えやリフォームが必要になる可能性がある
このような場合は、住宅ローンの繰上返済を急ぐことで逆に家計を圧迫してしまうリスクがあります。
進学や車の買い替えについては、ある程度予測できると思います。
しかし、まだ大丈夫と思っていた家電が壊れたり、家の修理が必要になることも。



家電の故障って、連鎖するよね・・
分譲マンションでは築10年を超えるあたりから大規模修繕が必要になり、「修繕積立金」が値上げになることも多いようです。
昨今の値上げで、修繕費も増加傾向。
修繕積立金が値上げされる際には、1.5倍~2倍程度になることも少なくありません。
ある程度の築年数なら、そういった事情も考えて、ある程度の資金は手元にあったほうが安心ですよね。
3. 投資や資産運用の利益を取りたい場合


住宅ローン金利が1%以下であれば、資産運用のリターンのほうが上回る可能性があります。
住宅ローンの繰り上げ返済で節約できる金利 | < | 資産運用で得られる利益・配当金 |
例えば、年3~5%で運用できていれば、ローン返済よりも資産を増やすほうが合理的ですよね。
新NISAで人気のS&P500は、過去30年の平均年率リターンが約10.2%(ドルベース)。
住宅ローン金利と比べてかなり高いリターンが期待できます。
ただし投資の場合、元本割れのリスクは避けて通れません。
投資した資金で繰上返済が必要になった場合、評価額が投資金額を下回ることもありえるんです。
数年以内に繰り上げ返済に使う資金であれば、マイナスになることもあるかもしれません。
さらに言えば、マイナスになることはなくても、住宅ローン金利よりも運用の利益・配当金が下回ることも。
住宅ローンの繰り上げ返済で節約できる金利 | > | 資産運用で得られる利益・配当金 |
そうなると、「繰上返済したほうがよかった」ということに。
そこでおすすめなのは、長期で積立投資をすること。
過去のデータから、10年以上にわたってS&P500を積立した場合に元本割れするケースは、100年近い歴史の中で「数%」。
20年以上なら「ほぼゼロ」なんだそうです。
住宅ローンの返済を急ぐ理由がなければ、資産を増やしてからの返済でも良さそうです。
4. 住宅ローン付随の保険に加入している場合


住宅ローンを組むときに、ほとんどの方が団信(団体信用生命保険)に加入しています。
団信は、契約者に万一(死亡や高度障害など)があった場合に残りのローンがゼロになる保険。
当たり前のように付随していますが、生命保険と同じような心強い保障ですよね。
例えば、1,000万円を繰り上げ返済したとします。
その分ローンは減るけど、保障も1000万円分減ってしまうわけです。
保険金が現金で支給されるのか、ローンの残債をゼロにするのかという違いはありますが、
住宅購入時に
「団信があるから、その分生命保険は不要」
と生命保険を減額・解約する方も多いようです。
心当たりのある方は、繰上返済の前に保障面を見直してみてくださいね。
私は、住宅ローンを組んだ時点で夫が40代でした。
健康リスクを考えて、団信だけでなく通常金利に0.3%上乗せの「疾病保障付き住宅ローン」に加入しています。
「疾病保障付き住宅ローン」は、がん診断または脳卒中などで入院したら、住宅ローン残高がゼロになるというもの。
住宅ローンが、がん保険のような役割も担ってくれるので、安心材料にもなっています。



がん保険は解約しました!
生命保険では、一般的に
- 年齢が上がるにつれて、必要な保障額は下がる
- 年齢が上がるにつれて、更新のタイミングで保険料は大幅に値上がりする
という特徴があります。
ライフステージによって、保険と住宅ローンのバランスを考えて繰り上げ返済を利用したいですね。
5. 住宅ローン控除を受けている場合


住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末のローン残高に応じて所得税が還付される制度。
特に控除率が高かったり、控除期間が10年・13年ある人にとっては、限度額によってはローン残高があるほどお得です。
たとえば、年末残高が多いほど最大40万円(またはそれ以上)の控除が受けられるので、繰り上げ返済で残高が減ると、その分控除額も減ってしまいます。
住宅ローン控除の金額と、今支払っている住宅ローン金利を比べてみてください。
変動金利の場合は、控除される金額のほうが大きい場合が多いと思いますよ。
したがって、控除期間が終わるまでは「急いで返さないほうがトータルで得」という場合もあるのです。



ローン控除が終わるまで、あと数年。しっかり恩恵を受ける予定です。
まとめ:返済の“タイミング”が重要
繰り上げ返済は一見すると家計にやさしい選択肢に見えますが、人によってはデメリットが上回るケースもあるのが現実です。
「今すぐ返す」より「ゆっくり確実に返す」ほうが家計の安心感につながったり、トータルの資産が増えることもありそうです。
もちろん、今後の金利変動によっては繰り上げ返済をしたほうが良い場面も増えるでしょう。
でも、繰上返済はいつでもできます。
焦らず、自分にとってベストな返済ペースを考えてみましょう。



私はNISA積立投資枠でコツコツ積み立てながら、繰上返済のタイミングを決める予定です。